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S1:自分の情報体系を構築する

AIが自分を定義する前に、自分で自分を定義しておく。

自分の価値観・判断基準・考え方の軸を、自分のPCに蓄積・管理できる状態です。AIを使って自分の思考を強化できる体制が完成します。

自分で考えているつもりでも、実はAIのすすめ通りに動いてしまっていることがあります。

おすすめされた情報を受け取り、提案された答えを選ぶ——これが積み重なると、「自分の考え」と「AIの提案」の境界がわからなくなります。

まず自分自身のデータを自分で持つことが、すべての出発点です。


S1は「何かを覚える」スキルではありません。自分の思考を記録・分析・更新し続ける仕組みを自分のPC上に作るスキルです。

基本の考え方:ホワイトボックス化

Section titled “基本の考え方:ホワイトボックス化”

多くのAIアプリは「ブラックボックス」です。何が起きているか見えない。

S1が目指すのはその逆——自分のデータがどこにあり、AIが何をどう分析しているかが全部見える状態です。データはすべて自分のPC上のファイルに置きます。クラウドサービスが終了してもデータは手元に残ります。


フォルダを作る前に、2種類のツールを用意します。

① IDEアプリ(ファイルを編集・管理するアプリ)

MDファイルの作成・編集に使います。おすすめは以下の2つです。

アプリ特徴
Cursor無料プランのあるIDEアプリ。Claude Codeとの連携がしやすい
AntigravityGoogleのIDEアプリ。AI(Gemini)が最初から組み込まれている

MDファイルは自分で直接書く必要はありません。AIに「このテーマで概念ファイルを作って」と依頼すれば、AIが書いてくれます。

② AIアプリ(ファイルの中身を作る・分析する)

AIツール特徴
Claude Codeファイルの分析・Ontology更新・レポート生成が得意
Gemini(Antigravity内蔵)Google Oneの契約1つでIDEとまとめて使える。コストを抑えたい場合におすすめ

どちらを選んでも構いません。Antigravityは、IDEとAI(Gemini)が1つのGoogle One契約でまとめて使えるため、導入コストを抑えやすい選択肢です。


フォルダ構造をつくる

ツールの準備ができたら、自分のPC上にフォルダを作ります。

最初は、S1に必要な最小構成——3つのフォルダだけで大丈夫です。トップのフォルダ名は何でも構いません。この教科書では myproject(自分のプロジェクト置き場)として進めます。

myproject/
├── inbox/ 音声メモ・走り書きをまず入れる場所
├── ontology/ 自分の頭の中の地図
│ ├── concepts/ 概念ファイル(1テーマ = 1ファイル)
│ ├── people/ 人物ファイル(1人 = 1ファイル)
│ ├── organizations/ 組織ファイル(1組織 = 1ファイル)
│ └── relations/ 概念同士のつながりを記録
└── actionlog/ 日ごとの行動記録

Tip: フォルダ名は「半角英数の短い単語」にする フォルダ名は、自分が分かりやすい名前に変えて構わない。ただし半角英数の短い単語にしておくと、AI-Agentへの指示が書きやすく、ツール間の相性問題も起きにくい。inbox は「とりあえず入れる箱」、ontology は「自分の地図」、actionlog は「やったことの記録」——名前を見ただけで役割が分かる状態を保つ。

S1で最初に作るのは、自分の思考・人物・組織・概念・行動が残る場所です。これだけあれば、AI-Agentに読ませて自分のOntologyを育て始められます。

以下は、SOVREN FrameworkをS9まで履修したときの完成形です。最初から全部作る必要はありません。スキルが進むたびに、フォルダが1つずつ増えていきます——S2でリサーチ、S3で発信、S5で財務、S6で外注管理、S8で資本計画。

myproject/
├── inbox/ 音声メモ・走り書きをまず入れる場所(S1)
├── ontology/ 自分の頭の中の地図(S1)
│ ├── concepts/
│ ├── people/
│ ├── organizations/
│ └── relations/
├── actionlog/ 決めた行動とその結果(S1)
├── research/ AIリサーチ結果の蓄積(S2で追加)
├── content/ 発信設計シート・コンテンツの管理(S3で追加)
├── outsource/ 外注案件の管理(S6で追加)
└── finance/ 財務データ(S5で追加・S8で拡張)
├── monthly/ 月次収支データ(MoneyForward/FreeeのMD変換ファイル)
├── assets/ 総資産・負債の記録
├── investment/ 投資実績の追跡
├── capital_plan/ 長期資本計画(S8で詳しく設計)
└── hedge/ リスクヘッジ・資産管理(S8・S9で詳しく設計)

このフォルダが、自分の頭の中の地図(Ontology)を外に出したものになります。


運用の前に:安全に使うための2つの原則

Section titled “運用の前に:安全に使うための2つの原則”

ステップに進む前に、AI-Agentを安全に使うための原則を2つ押さえておきます。

① AIに参照させる範囲を限定する

Section titled “① AIに参照させる範囲を限定する”

AI-Agentにフォルダを読み込ませるとき、Cドライブ全体を参照させないようにします。システムファイルを誤って改変されるリスクがあるためです。

AI-Agentに指定するのは、myproject フォルダのみにします。分析に必要なファイルは、myproject内に移動するか、読み込ませたうえでmyproject内に設置するのがおすすめです。

「作業のためのフォルダだけをAIに見せる」という原則を守ることで、意図しないファイルの改変・削除を防げます。

Tip: プロジェクトごとにフォルダを分ける 複数の制作物を同じフォルダで進めると、企画書・画像・HTML・修正ログが混ざり、AIが別案件の情報を参照しやすくなる。WEBページ、資料、アプリなどを作るときは、案件ごとにフォルダを分ける。たとえば projects/ramen-lp/ の中に plan.mdindex.htmlimg/ を置く。

② AIは手動でキックするのが基本

Section titled “② AIは手動でキックするのが基本”

AIを「朝に自動起動して勝手に記録させる」運用はおすすめしません。自動タスクはリソースを消費し、意図しない大量ファイル生成やエラーの原因になります。

作業のたびに自分でAI-Agentに指示を出します。これが最も安全で、生成物の品質も保ちやすい方法です。スケジュール自動実行やバックグラウンド常時稼働は、S1の段階では使いません。


ステップ2:思考をインプットする(Data層)

Section titled “ステップ2:思考をインプットする(Data層)”

毎日・毎週、自分の思考を inbox に記録します。

やり方(例):

  1. スマホで音声メモを録音する(考えたこと・気づいたことを話すだけ)
  2. WhisperなどのSTT(音声→テキスト変換)アプリでテキストにする
  3. Google Drive経由でPCの inbox フォルダに自動保存する

Tip: データはMD・CSV・JSONで管理する PDF・ExcelはAI-Agentにとって読み込みコストが高く、構造も失われやすい。inbox に保存するファイルは、できる限りMarkdown(.md)・CSV・JSONの形式にする。PDFや画像で渡さざるを得ない場合は、まずテキスト化してから保存する。

Tip: 本番Ontologyに仮データを入れない 冗談、仮名、テスト用の文章、あとで消すつもりの雑なデータは、inbox/ や一時フォルダに置く。ontology/ はAIが判断の根拠として読む場所なので、本番で使う人物・組織・概念だけを入れる。遊び場と本番環境を分けることが、AIの判断品質を守る。

音声メモだけでなく、手書きのBSシート(Brain Stormingシート)に書き出してから、あとで音声やテキストにしてもOKです。

BSシートの作り方は簡単です。

  1. B5サイズのルーズリーフを用意する
  2. 紙を縦に二つ折りする
  3. 9センチほどの幅の、細長い罫線ノートとして使う

使うときは、考えたいトピックを一つ決めます。たとえば「自分の強み」「今やるべき事業」「なぜこの市場に可能性を感じるのか」などです。

トピックを決めたら、箇条書きで上から一気に書いていきます。途中で手を止めず、うまく書こうとせず、思いついたことをそのまま下まで出します。

テーマ: なぜAIPスクールを広げたいのか
- AIを使える子を増やしたい
- でもAIに答えを出させるだけでは危ない
- 自分で判断できる子を育てたい
- 保護者は「AIが怖い」と思っている
- だから安全性や法教育もセットにしたい
- 点数が上がることも大事
- でも本当は、学び方を自分で持てることが大事

BSシートは、きれいな文章を書くためのものではありません。自分の中にある考えを、検閲せずに外へ出すための道具です。書き終わったら、スマホで写真を撮る、音声で読み上げる、AI-Agentに渡してテキスト化するなどして、inbox に保存します。

「正しく書こう」とする必要はありません。とにかく出すことが重要です。

外出先でパソコンがない場合は、スマホの標準音声録音アプリで録音し、そのデータをGeminiアプリにドラッグ&ドロップ(D&D)してテキスト化します。サードパーティの音声認識アプリは情報漏洩リスクがあるため推奨しません。

1回の録音は10分程度を上限にします。長すぎるとAIへの負荷が高くなり、整理精度が落ちます。

Tip(Windows): 「Windowsキー+H」でカーソル位置に音声入力が可能。AI-Agentに複雑な内容を指示するとき、テキスト入力欄にカーソルを合わせた状態で使うと、話しながら指示を入力できる。


ステップ3:概念ファイルを作る(Logic層)

Section titled “ステップ3:概念ファイルを作る(Logic層)”

インプットをもとに、ontology/concepts/ フォルダに概念ファイルを作ります。

1ファイル = 1テーマ。たとえば:

concepts/
├── 自分の強み.md
├── 市場の選び方.md
├── 意思決定の基準.md
└── 苦手なこと.md

概念ファイルに書くこと:

  • このテーマについて今どう思っているか
  • 自分のモチベーション・理解度(状態)
  • 関連する出来事・判断の記録

AI-Agentを使ってMDファイルを作成・加筆する

Section titled “AI-Agentを使ってMDファイルを作成・加筆する”

概念ファイルは、手作業で一から書くよりもAI-Agentを使って作成する方が望ましいです。MDファイルには、見出し、タグ、関連概念、人物、組織、更新履歴など、多くの構造情報を差し込む必要があります。これを毎回手で整えると、記録すること自体が重くなり、継続できなくなります。

まずはAI-Agentに、何を作りたいかをざっと伝えます。

Tip: コア情報から指示する 「なんとなくこういうテーマで」という曖昧な指示だと、AIは一般的な内容を生成してしまう。何を作るか・自分はどう考えているか・誰が関係するかという核心を最初の指示に含める。細部は後から追記する。

「自分の市場選定の考え方」について、concepts用のMDファイルのたたき台を作ってください。
関連しそうなタグ、関係する人物・組織、今後追記すべき論点も入れてください。

重要なのは、作ってもらったMDファイルを必ず全部読むことです。分からない言葉、しっくりこない表現、自分の感覚と違う部分があれば、そのまま残さず、AI-Agentに分かる言葉へ書き換えてもらいます。

この表現は自分の言葉ではありません。
もっと日常的な言い方に直してください。
この部分は意味が分かりません。
具体例を入れて、何を言っているのか分かるようにしてください。

読んでいないMD、意味が分からないMD、自分の言葉になっていないMDは、Ontologyの中ではゴミになります。ディレクトリに残さない、増やさないことが大事です。

Tip: 大量生成後は必ずファイル数を確認する AI-Agentにフォルダ全体を渡して整理させると、意図しない大量ファイルが生成されることがある。生成後は必ずファイル数と内容を確認し、自分が指示していないファイルは即削除する。「あとで整理しよう」という積み残しがOntologyを汚染する原因になる。

たたき台を読んだら、それに沿って、今の自分が考えていることをAI-Agentにどんどん追記・書き直ししてもらいます。

このファイルに、いま自分が考えていることを追記してください。
- 自分はこの市場に可能性を感じている
- 理由は、既存プレイヤーがAIを使えていないから
- ただし、現場の人に技術用語で話しても伝わらない
- だから「作業が30分短くなる」のような言葉に変換する必要がある

AIが作る文書は、基本的に既存のMDや一般的な知識をもとに、それらしく組み立てられます。そのため、AIだけで作った書類は、見た目は整っていても実効性を持たない場合がほとんどです。

Ontologyに価値を持たせるのは、今の自分が本当に考えていること、迷っていること、判断したことです。AI-Agentは清書係・構造化係として使い、自分の思考をどんどん追加していきます。


ステップ4:行動を記録する(Action層)

Section titled “ステップ4:行動を記録する(Action層)”

actionlog に、日にちごとに自分が行ったことを記録します。

行動ログは「AIが提案したことを実行したか」だけを書く場所ではありません。思考、資料作成、MTG、リサーチ、メール、管理業務、移動、発信など、その日に自分が実際に使った時間を記録します。

ファイルは月ごとに作ります。

actionlog/
├── 2026-06.md
├── 2026-07.md
└── YYYY-MM.md

月別ファイルの中では、1日を1ブロックとして記録します。

---
month: 2026-06
updated: 2026-06-05
---
# アクションログ 2026年6月
---
## 2026-06-05(金)
> 稼働: 5h | 主要事業: SOVREN Framework, AIPスクール
| 時刻 | 種別 | 事業 | 内容 | object_id | 成果・メモ |
|------|------|------|------|-----------|-----------|
| 09:00-10:00 | 思考 | SOVREN Framework | オープンソース公開方針を整理 | `SOVREN_Framework` | スクール固有技術ではなく、公開Frameworkとして広げる方針に決定 |
| 10:00-12:00 | 資料作成 | SOVREN Framework | Manifestoページのたたき台を作成 | `SOVREN_Framework` | 原典サイトのトップメッセージを作成 |
| 13:00-14:00 | MTG | AIPスクール | 保護者向け体験導線を検討 | `AIPスクール` | 90分体験セッションを入口にする案を整理 |
項目書くこと
時刻09:00-10:30 のように時間帯を書く。不明なら概算でよい
種別思考、資料作成、MTG、インプット、コミュニケーション、管理業務、移動、開発・実装、発信など
事業どの事業・プロジェクトに関係するか
内容何をしたかを一文で書く
object_id関係する人物・組織・概念のOntology IDを書く。対象がなければ
成果・メモ何が決まったか、何を作ったか、何に気づいたかを書く

大事なのは、「やったこと」をただ並べることではありません。あとでAI-Agentが読んだときに、どの行動が、どの人物・組織・概念・意思決定につながっているかが分かるようにすることです。

やった・やれなかった・別のことをした——どれでも記録します。「やれなかった理由」もデータになります。日ごとの行動ログが残っていると、AIはあなたの思考パターン、時間の使い方、先延ばしの癖、成果が出やすい行動を分析できるようになります。

Tip: プロジェクトの終了・中断はAIに明示する 進行中のプロジェクトを止める場合、アクションログに「中断」「キャンセル」と記録するか、関連する概念ファイルのステータスを更新する。報告を怠ると、AI-Agentが後で全体分析をするときに古い情報を引きずり、誤った整理をする原因になる。


ステップ5:概念同士のつながりを記録する

Section titled “ステップ5:概念同士のつながりを記録する”

概念同士のつながりは、自分で一つずつ手作業で記録するのではなく、AI-Agentにお願いして整理してもらいます。

概念ファイル、人物ファイル、組織ファイル、アクションログが増えてくると、自分では気づいていない関係性がたくさん出てきます。たとえば「自分の強み」が「市場の選び方」に影響していたり、「苦手なこと」が「外注する業務」につながっていたりします。

こうした関係性を、AI-Agentに読ませて ontology/relations/links.json や関係性マップに整理してもらいます。

myproject全体を見直して、人物・組織・概念・アクションログのつながりを整理してください。
特に以下を見つけてください。
- 同じテーマに関係している概念
- 特定の人物や組織と結びついている概念
- 行動ログから見える、継続的な関心や意思決定のパターン
- links.json に追加した方がよい関係性
- 既存の関係性で古くなっているもの

おすすめは、週1回または月1回、AI-Agentにmyproject全体を見直してもらうことです。フォルダ全体を読み直し、マップとつながりを再構築してもらうことで、自分の頭の中の地図が少しずつ精密になります。

ただし、Agentが提案した関係性も必ず確認します。しっくりこない関係、意味が分からない関係、今の自分の感覚と違う関係は、そのまま残さず修正します。関係性マップはAIが作るものではなく、AI-Agentと一緒に育てるものです。


ステップ6:Ontology全体を分析する

Section titled “ステップ6:Ontology全体を分析する”

ステップ1〜5で、インプット、概念ファイル、行動ログ、関係性マップが少しずつ蓄積されます。ここまで揃ったら、AI-AgentにOntology全体を分析してもらいます。

これは単なる「AIに相談する」ではありません。自分が残してきたMDファイル、日々の行動、人物・組織・概念のつながりをまとめて読み直し、今の自分の判断軸を再構築する作業です。

myproject全体を読んで、S1の観点からOntology全体を分析してください。
見てほしいこと:
- いま自分が繰り返し考えているテーマ
- 行動ログと概念ファイルの間にあるズレ
- よく登場する人物・組織・概念
- まだ言語化できていない判断基準
- 古くなっているMDや、統合した方がよいMD
- 次に作るべき概念ファイル
- 次の1週間で取るべきアクション

分析結果は、必ず読みます。分からない部分は、分かる言葉に直してもらいます。違和感がある指摘は、AI-Agentに理由を聞いたり、自分の考えを追記して修正します。

このステップの目的は、AIに答えを決めてもらうことではありません。自分が残した情報を材料にして、AI-Agentと一緒に自分の判断軸を更新することです。


ツール用途費用
Cursor または Antigravity(IDE)ファイルの編集・閲覧無料プランあり
Claude Code または Gemini(AI-Agent)AI分析・Ontology更新月数千円程度
対話型AI(ChatGPTClaudeGemini日常の壁打ち・質問無料プランあり
Google Driveスマホ↔PC間のファイル同期無料
WhisperベースのSTTアプリ音声→テキスト変換無料

思考・発言・気づき
音声メモ → テキスト化(inbox)
概念ファイルに整理(ontology/concepts)
行動を記録(actionlog)
つながりを記録(ontology/relations)
Ontology全体を分析
次のアクションを決める
実行 → 結果を記録 → またインプットへ
(ループ)

自分の主要な考え方の軸と判断基準が言葉になっており、継続的に更新されている状態です。

  • myproject フォルダを自分のPCに作成した
  • 概念ファイルが5つ以上作成されている
  • 概念同士のつながりが links.json に記録されている
  • AIを使って自分の思考パターンを分析した記録がある
  • 日々の意思決定の根拠を言葉にできる

ワーク:企画書を作って、何かを作成してみよう

Section titled “ワーク:企画書を作って、何かを作成してみよう”

S1の仕上げとして、AI-Agentと一緒に何かを1つ作ってみます。WEBサイト、会社やサービスの説明文章、プレゼンテーション資料、簡単なアプリケーション——何でも構いません。

ここで体験してほしいのは、作成に入る前に、詳細の企画書MDを構築するという進め方です。AIに「○○を作って」といきなり依頼すると、それらしいけれど自分のイメージとは違うものが出てきます(ステップ3で見た「コア情報から指示する」と同じ原理です)。この段階で、自分の頭の中にあるイメージを全部企画書に落とし込みます。

手順は4ステップです。

1. 企画書のMDを作る

要件定義をAgentに伝え、ざっと企画書全体のひな型を作ってもらいます。

「自分の店の紹介ページ」を作りたいです。まず企画書のMDを作ってください。
要件:
- 誰に見てほしいか:近隣の30〜50代・初めて店を知る人
- 何を伝えたいか:仕込みに手間をかけている店だということ
- どんな印象にしたいか:誠実・清潔・気取らない
- 必ず載せること:営業時間、場所、予約方法、看板メニュー3品
企画書には、目的・ターゲット・構成案・各セクションに載せる内容・
トーンの指定・未決定の論点、という項目を入れてください。

Tip: 画像は img/ フォルダに分け、用途を企画書に書く WEBページや資料で画像を使う場合は、画像ファイルを img/ フォルダにまとめるだけでは足りない。企画書に「どの画像を、どのセクションで、どんな印象を出すために使うか」まで書く。AIは画像の意図を勝手には理解しないので、画像の役割も要件定義に含める。

2. MDを見ながら、自分のイメージと違うところをすべて修正する

ひな型を必ず全部読み、イメージと違う部分を残さず直します。「この言い回しは自分の店らしくない」「この構成だと伝えたいことが最後に来てしまう」——違和感を全部、企画書の段階で潰します。ここで手を抜くと、成果物の修正で何倍も時間がかかります。

3. 企画書のMDを参照して、実際のWEBページや資料を作成する

この企画書MDを読んで、その通りにWEBページ(HTML1ファイル)を作ってください。
企画書に書いていない要素は追加しないでください。

Tip: 企画書にない要素を追加させない AIは「よかれと思って」キャッチコピー、FAQ、架空の実績、余計なセクションを足すことがある。制作を依頼するときは、必ず「企画書に書いていない要素は追加しない」と明示する。足したい要素が出てきた場合は、先に企画書へ追記してから制作に戻る。

4. 成果物を確認し、足りていないところを修正し、その旨を企画書MDに追記する ←重要

できあがった成果物を確認し、足りない点・直したい点を修正します。そして何をなぜ直したのかを、企画書MDに追記します

## 制作後の追記(2026-06-12)
- 写真が暗く「清潔」の印象が出なかった → 昼の自然光の写真に差し替え
- メニュー名だけでは仕込みの手間が伝わらない → 各品に一言(仕込み時間)を追加
- 次回への学び:「印象」の要件は、文章だけでなく写真の指定まで企画書に書く

Tip: 修正指示は企画書に戻す 成果物だけを直して終わると、次に同じものを作るときにまた同じ説明が必要になる。直した内容、直した理由、次回最初から入れるべき条件を企画書に追記する。企画書が「納品前の指示書」から「自分の制作Ontology」に変わる。

この追記が、今後の制作の方向性検討にとても役に立ちます。企画書が「作って終わりの書類」ではなく、自分の制作の判断基準が蓄積されるファイルになるからです。これはOntologyのサイクル(記録→分析→更新→書き戻し)と同じ構造であり、S4のLP作成(コンパウンド戦略)でこの型をそのまま本格的に使います。

Tip: 作ったHTMLを、無料でネットに公開してみよう

手元で完成したHTMLは、無料で・その日のうちにインターネットに公開できます。使うのは次の2つの無料サービスです。

  • GitHub(ギットハブ):ファイルをネット上に保管・管理する場所。作ったHTMLファイルを置いておく「倉庫」だと考えてよい。無料アカウントで使えます。
  • Netlify(ネットリファイ):GitHubに置いたファイルを、誰でも見られるWEBページとして公開してくれるサービス。GitHubと連携させると、ファイルを更新するたびに自動でページが更新されます。これも無料の範囲があります。

一番簡単なのは、Netlify Drop を開いて、HTMLの入ったフォルダをドラッグ&ドロップする方法です。 このページなら、GitHubもアカウント登録も後回しで大丈夫。フォルダを画面に放り込むだけで、数秒で https://○○○.netlify.app というURLが発行され、すぐにスマホでも開けます(※ページを残し続けたい場合は、あとで無料アカウントを作って保存します)。

この無料範囲をうまく使えば、お金をかけずに一時的なページを公開できます。自分の店の紹介ページを知人にURLで送ってみる、サービスの説明ページを商談相手に見せてみる——「作ったものが実際にネットで開ける」という体験は、それだけで世界の見え方が変わります。

(AI依頼例)
作ったHTMLファイルを、Netlify Drop(https://app.netlify.com/drop)で
無料公開する手順を、パソコンが苦手な人にも分かるように
1ステップずつ、画面のどこを押すかまで具体的に教えてください。

本格的に運用するなら、GitHubとNetlifyを連携させた自動公開に進みます。これはS4で事業のLPを量産するときに本格的に使います。

ワークの完了目安

  • 作成前に企画書MDを作り、全文読んで自分のイメージに合わせて修正した
  • 企画書MDを参照させて成果物(WEBページ・資料など)を作成した
  • 成果物の修正内容と理由を企画書MDに追記した
  • [ ](発展)作ったHTMLをNetlifyで無料公開し、URLを誰かに送ってみた

S1を勉強会や授業で扱う場合は、2時間×3回で以下の流れにすると実装しやすいです。

時間テーマ到達目標
12hAgentでフォルダ構造とMarkdownを作れるようにするIDEとAI-Agentを使い、myproject の基本フォルダを作る。自己紹介、概念、プロジェクト概要などのMDを作成する
22hアクションログを設置し、フォルダ構造をOntology化するactionlog/ を設置し、作業記録を残し始める。AI-Agentにフォルダ全体を読ませ、概念・人物・関係性を整理する
32hワーク:企画書MDを作成し、バイブコーディングを行う企画書MDを作り、内容を確認・修正したうえで、WEBページや資料などの成果物をAI-Agentで作成する

3回が終わった時点で、参加者は「自分のPCにAIが読める仕事場を持ち、企画書を起点に成果物を作り、修正内容を記録へ戻す」一連の流れを体験している状態になります。